グルーから発生する「揮発成分」って何?

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「グルーが硬化するとき、揮発成分が発生する」という事実は、アイリストの方ならご存知のはず。しかし、揮発成分の影響や、どうしたら刺激が抑えられるかということをお客様に説明できるでしょうか?今回は、揮発成分の基礎知識と、揮発成分が少ないグルー、そして目に染みた場合の対処法についてご紹介します。

「揮発成分」って人体に影響はあるの?

結論から言うと揮発成分は、人体に影響があります。揮発成分とは、「ホルムアルデヒド」のこと。ほぼ100%グルーに含まれている「シアノアクリレート」が硬化する際に発生する成分です。刺激性のある無色透明な気体で、人体にさまざまな影響をもたらします。施術中、お客様に「目が染みる」と言われる場合もあるでしょう。この目に染みる原因が、ホルムアルデヒドです。

そのほかにも

・目が腫れたり鼻水が止まらなくなるなどのアレルギー反応を引き起こす
・目が充血する

といった症状を引き起こすことも。また、ひどい場合は頭痛・めまい・吐き気などシックハウス症候群のような症状が見られることもあります。

そのような事態を起こさないために、なるべくホルムアルデヒドが少ないものを使用したい、と思うところですが、そんなグルーはあるのでしょうか。

揮発性のないグルーはあるの?

ホルムアルデヒドが発生しないグルーを使用すればいいのでは?と思うかもしれませんが、残念ながらシアノアクリレートを含むグルーからは必ずホルムアルデヒドが発生します。前述の通り、ホルムアルデヒドはシアノアクリレートが硬化する際に発生する成分だからです。シアノアクリレート不使用のグルーもまれに販売されていますが、白化現象が起こりやすい、モチが悪いなどのデメリットが多いためほとんどのサロンでは導入していません。

しかし、シアノアクリレートを使用したグルーでも、正しく取り扱いさえすれば、ホルムアルデヒドの放出量を安全基準値以内に収めることができます。

・サロン内の室温を23℃以内にする
・施術前にしっかりグルーを振る

この2点を守らないとホルムアルデヒドの放出量が増えてしまうので気を付けましょう。

また、エチルグルーよりもブチルグルーの方がホルムアルデヒドの放出量が少ないため、刺激が弱いです。ブチルグルーは「医療グレード」と呼ばれるほど優しく、敏感肌のお客様にもおすすめできます。独特のニオイも少ないため、妊娠中のお客様にも使えるでしょう。しかし、エチルよりもモチが良くないことも頭にいれておきましょう。

ブチルでも、グルーである以上、ホルムアルデヒドの発生は避けて通れませんが、極力刺激を少なくしたいという場合には選択肢の一つになります。

また、現在エチルグルーを使用していてお客様から「目に染みる」と言われるからと言って必ずしも「グルーが悪い」と思わないことを推奨します。

グルーは取り扱いによって大きな影響を受けるため、室温や施術前の処理など、グルーを使用する環境を見直すことで改善されるかもしれません。

しかし、実際に目に染みてしまった場合、アイリストとしてどのような対処をとることができるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

揮発成分が目に染みる場合の対処法

事前に眼の状態をチェックする

染みてから対処するのではなく、初めから染みない状況が望ましいですよね。カウンセリング中、さりげなくお客様の目をチェックしてみましょう。お客様の目が充血していたり、乾燥しているときは目が敏感になっている状態です。そのため、ホルムアルデヒドに反応しやすくなっています。普段なら問題ないグルーでも目の状態によっては染みる可能性もあるため、必ず目の状態をチェックしましょう。特に、花粉症の時期はよくお客様にヒアリングをしてみてください。花粉症の症状があるお客様は、いつもと目の状態が違います。症状を抑えるために薬を飲まれている場合、目が乾燥しやくなっている場合も。お客様が「大丈夫」と言われても、必ずデメリットを伝えて納得していただいた上で施術することが大切です。しっかりと説明をすることが、トラブル回避に繋がります。場合によっては、施術をお断りすることも必要かもしれません。

テープ貼りを見直す

お客様に「染みる」と言われた場合、まずはテープ貼りを見直してみましょう。少しでもお客様の白目が見えている場合は、即座に貼り直しが必要です。目が開いていると、ホルムアルデヒドなどの揮発成分が染みやすくなります。また、目に刺激を感じると涙が分泌されることも。するとグルーに涙が付着し、白化現象が起こることも考えられます。貼り直した後は

1:テープは浮いていないか
2:テープの先が粘膜や目頭に触れていないか
3:目は開いていないか
4:上まつげが絡んでいないか
5:下まつげは全てキャッチできているか

の5点を改めて指差し確認するようにしましょう。

揮発成分を飛ばす

施術中はエアコンプレッサーやエアポンプで揮発成分を飛ばすようにしましょう。ホルムアルデヒドは空気より重いため、目に滞留しやすいからです。

アレルギーの可能性を疑う

グルーの揮発成分だけでなく、アレルギーが発症している場合もあります。

グルーの中には増粘剤(アクリル樹脂)や着色剤(カーボン、アンスラキノン系着色剤)、安定剤(ヒドロキノン、ヒドロキシアニソールなど)、柔軟性成分(ラテックス)といったさまざまな成分が含まれています。この中でもラテックスは重篤なアレルギーを引き起こす可能性がある成分です。アレルギーリスクが高いため国内ではほぼ流通していませんが、ゼロとは言い切れません。グルーのほかにも、ツイザーなどの金属やテープの粘着剤が原因となることも。

染みるだけでなく、かゆみや腫れといった症状が見られる場合は、アレルギー反応を疑いましょう。また、グルーでアレルギー反応が出た場合すぐにオフしたくなりますが、かえって危険な場合もあります。必ず眼科医の指示を仰ぐようにしてください。

グルーが目に入っている

絶対にあってはならないことですが、グルーが目に入ってしまった場合はすぐに流水で15分以上洗い流すようにしましょう。グルーが目に入った結果、眼球に傷がつき結膜障害を起こすこともあるのです。最悪の場合、失明する危険性もあります。グルーは粘度があるため、直接目に流れ込むことは考えにくいでしょう。しかし、お客様の目が開いていたり、マツエクの位置が根元に近すぎた場合はグルーが流れ込む可能性もあるのです。洗い流した後は、必ず眼科を受診することを勧めましょう。グルーはアイリストにとって当たり前のような存在ですが、正しく扱わないとこれだけのリスクが伴うなんて恐ろしいですよね。グルーの取り扱い方は基本中の基本。取り返しのつかないことが起こる前に、自分が正しく扱えているか改めて確認してみましょう。

まとめ

今回は、目が染みる原因となる「揮発成分」の正体について考察をしました。現在主流となっているグルーのほとんどに、シアノアクリレートは含まれています。そのため、揮発成分の正体である「ホルムアルデヒド」を発生させないということは難しいでしょう。発生させないのではなく、どうしたらお客様に快適に施術を受けてもらえるかということに重点を置くことが大切です。少しでも染みないための対策をしっかりと行い、それでも染みるようなら適切な対応ができるよう、日頃から知識を身に付けておきたいですね。

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