「なんだかグルーが匂う気がする…」その理由と対策とは

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普段通り施術を進めているけれど、今日はなぜかグルーのニオイがきつく感じる…そう思ったら、少し離れてキレイな空気を吸った方が良いのかも。無理をしてそのまま施術を進めると、場合によっては体調を崩す原因にもなります。今回は、グルーのニオイの原因とその注意点、対策について勉強していきましょう。

グルーのニオイの原因!『揮発成分』とは

グルーを開けたタイミングはもちろん、施術中に少しずつニオイが気になり始めたことはありませんか?実はその原因、グルーが硬化する際に発生する揮発成分にあります。グルーの主成分といえば、シアノアクリレート。そのシアノアクリレートは、水分と反応して硬化を始めるのですが、その際、ホルムアルデヒドなどの揮発成分を発生させることで知られています。ホルムアルデヒドとは、濃度によってさまざまなトラブルを引き起こすアレルギー物質。軽い場合は、刺激臭を感じたり、目やのどに染みる程度で済みますが、重症化すると「シックハウス症候群」の原因にもなります。

一時期、「シックハウス症候群」がニュースで話題になっていたことを覚えていますか?これは、住宅建設に欠かせない、合板や壁紙などを接着する際に使用した接着剤の主成分が、シアノアクリレートであるために起こったトラブル。マツエクのグルーと同じように、接着剤が硬化していく中でホルムアルデヒドが発生し、目やのど、皮膚などに刺激を感じたり、めまいや頭痛などの症状を引き起こしたのです。この症状は、シックハウス症候群の典型的な症状。ホルムアルデヒドは、接着剤が完全に硬化し終わるまで発生し続けるため、新築の家やリフォーム後の家で生活を始めたばかりのときに、トラブルが発生しやすくなっています。
マツエクのグルーは、住宅建設とは違って使用する量が少ないのですが、施術時にホルムアルデヒドが発生し、目や鼻、のどなどに刺激をもたらす可能性があることに変わりありません。場合によっては、同じように「シックハウス症候群」を引き起こす可能性もあるのです。お客様が体調を崩されていないか、また施術者である自分自身も体調に異変がないか、常に気を配っておく必要があるでしょう。

施術中こんな症状が出たら要注意

お客様、そして自分自身が「シックハウス症候群」にならないために、早い段階で体調の変化に気付く必要があります。たとえば
□グルーのニオイが気になる
□気分が悪い
□頭痛がする
以上のような症状が出ていたら、ホルムアルデヒドが原因かもしれません。特に、普段は大丈夫でも、体調の悪い日は敏感になりがち。「いつも大丈夫だから!」と無理をすると、次第に症状が悪化する可能性もあります。カウンセリング時にお客様の体調に異変はないか、顔色は悪くないかなど、さりげなくチェックしておきたいですね。

また、妊娠中のお客様・施術者は特に注意が必要です。普段よりもニオイに敏感になりやすいだけでなく、ホルムアルデヒドなどのアレルギー物質への反応も過敏になっている場合があります。何度もマツエクをされた経験があるお客様も、そして、毎日グルーに触れている施術者であったとしても、誰でもホルムアルデヒドによる体調不良が起こり得ることを頭に入れておきましょう。

対策方法の紹介

では、実際に症状が起きてしまった場合、アイリストとしてどのような対処法が取れるのでしょうか?

1.一旦施術を中止する
お客様から体調不良を訴えられた場合、まずは施術の手を止めてください。そのまま施術を続けると、さらに症状が悪化する可能性も高いためです。部屋の換気をしながら、少しの時間休んでいただきましょう。もし休んでも体調が良くならない場合は、その日の施術は取りやめ、後日またご来店いただくと安心ですね。
施術の流れにも工夫が必要です。たとえばネイルサロンの場合、片手のデザインをすべて仕上げてからもう片方の手に移るサロンもあるでしょう。しかし、マツエクの場合、その方法はNG。万が一ホルムアルデヒドによる体調不良などが起きると、途中で中断し、そのままご帰宅いただくケースもあるためです。両目の施術を並行して進めるとともに、片目の中でもバランスよく施術していくと良いでしょう。具体的には
①中央に1本装着
②目頭側に1本装着
③目尻側に1本装着
④目頭と中央の間に1本装着
⑤目尻と中央の間に1本装着
⑥最初から繰り返す
といった流れが理想的。途中で施術を止めることになっても、目元に違和感は残っていないはずです。
また、お客様だけでなく、アイリスト自身が体調を崩す場合も珍しくありません。むしろ、毎日グルーに触れているみなさんの方が、体調を崩しやすいと言えます。なかなか手を止められないかもしれませんが、体調が悪くなった場合は部屋の換気をさせてもらうか、少し席を外してキレイな空気を吸って体を落ち着かせるなどし、あまりにひどい場合は他のアイリストに施術を代わってもらいましょう。

2.換気を徹底する
揮発成分による体調不良は、ホルムアルデヒドが発生している環境で必ず発症するわけではなく、ホルムアルデヒドの濃度が一定の基準を超えたときに引き起こされます。
専門的な表現になりますが、濃度による刺激レベルを理解出来るよう、例を挙げてみます。
まず、「刺激臭を感じ、その濃度の中でしばらく滞在していると目が染みるなどの症状が引き起こされる」濃度が0.08ppm程度。0.13ppm以上になるとのど(気管)に刺激が起こり始め、0.5ppm程度になると気分が悪くなったり呼吸が苦しくなるなどの症状が見られ始めるようです。(※濃度1ppm=1㎥の空気に、1㎤のホルムアルデヒドがある状態)
このように、濃度が上がれば上がるほど症状が悪化していきます。基本的なことですが、換気は徹底するようにしてください。美容師法でも定められている通り、サロン内の換気はアイリストの義務です。

「美容所の開設者は、美容所につき以下の措置を講じる必要があります。
1.常に清潔に保つこと。
2.消毒設備を設けること。
3.採光、照明及び換気を充分にすること。
4.その他都道府県が条例で定める衛生上必要な措置」
※引用元:http://www.ribiyou6pou.com/kiji/2-4.html

3つ目にある、「換気を充分にすること」が美容所開設に欠かせない条件。ホルムアルデヒドによるトラブルを軽減するためにも、サーキュレーターを使ったり窓を開けるなどし、空気を入れ替えるようにしてください。
ただし、マツエクサロンは壁やカーテンなどで仕切られた半個室状態であるケースが多いため、換気しきれないことも事実。そのため、空気清浄機を活用したり、ホルムアルデヒドを吸着させてくれるゲルをグルーの近くに置いておくと良いでしょう。

まとめ

もちろん、サロン側がどれだけ気を配っていたとしても、お客様自身の体調不良や体質によってはトラブルが発生する可能性があります。完全に防ぐことは難しいでしょう。だからこそ、万が一起きたときの正しい対処法を知っておくことがアイリストには求められているのです。サロンの換気は徹底できていますか?万が一のとき、対応する術を知っていますか?今回の記事を参考に、改めてホルムアルデヒドの危険性を振り返っておきましょう。

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