お客様に必要とされる技術者とは?日本まつ毛エクステンション認定機構理事長 井出隆夫氏へインタビュー

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今回、お話しを伺ったのは日本まつ毛エクステンション認定機構(JECA)の理事長を務める井出 隆夫氏。アイラッシュ業界を長きにわたって牽引してきたJECAの理事長とは、一体どんな人なのか?マツエクとの出会いや、現在どのような仕事をしているのか、さらにこれからのアイラッシュ技術者に求められるものとは、についても詳しく教えていただきました。

【経営者プロフィール】井出 隆夫さんとは?

昭和31年8月10日、理容室の3代目として神奈川県平塚市に生まれる。現在65歳。高校卒業後、理容師として両親の営む理容室で働きながら技術を磨く。30歳のとき、ヘアコンテスト全国大会で優勝。この優勝を機に、技術のチャンピオンから経営のチャンピオンを目指し、理容室を軸に多店舗経営を開始する。さらに美容室やエステサロンを展開し、理容業界から美容業界へ。

また人材育成の観点から、営業時間内に技術向上のためのトレーニングを行える職業訓練校を開校。しかし職業訓練校では国家資格の受験資格を得られないことから、理美容専門学校「湘南ビューティーカレッジ」を開校。
その後、理容の顔剃りの技術を活かし、女性の顔そり専門のフェイスエステサロンをオープン。これを機に、フェイスエステから着想を得て、まつ毛エクステンション業界へ進出する。

現在は、理容室・美容室・エステ・アイラッシュ・ネイルで多数の店舗を展開するライオンファミリーグループ代表のほか、一般社団法人 日本まつ毛エクステンション認定機構の理事長など、数多くの組織や団体、スクールの長を務める。

アイラッシュ関連の事業内容

理容・美容関連のさまざまな事業を展開されていますが、アイラッシュサロンはいつ頃オープンされたのでしょうか?

2013年に「ららぽーと横浜」にオープンした「ハニーアイラッシュ」が最初のお店です。現在は「ビナテラス ららぽーと海老名店」、「ビナテラス ららぽーと湘南平塚店」など、全部で5店舗あります。

2013年というと、マツエクよる健康被害が取りざたされていた時期ですよね。

サロンをオープンした当初は、まさにまつ毛エクステの施術に美容師資格が必要か否かについて議論されているグレーな状況。お客様に安心安全の技術を提供していかないと、まつ毛エクステンション産業自体が崩壊してしまうのではないかと危惧していました。だからこそ、自身が運営する専門学校でも、いち早く安心安全の基礎、特に衛生面の指導を行いました
湘南ビューティーカレッジはヘアをメインとした養成校ですが、当初からまつ毛エクステの分野にも力を入れてきました。その甲斐あって、現在ではまつ毛エクステの技術の習得を目的として入学される生徒さんも多くいます。エステティシャンとしてすでに活躍されているベテラン技術者が、まつ毛に関するメニューも展開したいとの思いでマツエクを習いに、本校を選んでくれるようなケースもあり大変嬉しく感じています。

湘南ビューティーカレッジならではの特色を教えてください。

プロが教える、プロづくりのための学校です。本校の先生はみな、学校で教えているだけではなく、現場でしっかり技術をやっている現役の方ばかり。ここにこだわる理由は、学校卒業後にすぐにデビューできる、つまり即戦力になる人材を育てるためです。

専門学校で勉強しても、卒業後サロンでまた一から勉強し直さなきゃならないということをよく耳にしますが、これでは全く生産性がありませんよね。戦力にならない、高いお給料をあげられない、社会保険加入できない、職場環境に恵まれないという悪循環が生まれてしまいます。実際に、理美容学校卒業後、就職できても半数は辞めてしまっているのが現状なんです。
技術者にとってお客様がつき、自分の技術が必要とされることは何よりのやりがいのはず。若い子たちにも、お客様に必要とされるという経験をつけることが大切だと思っています。学校を卒業したら即デビューできるプロを育てることが本校の主旨です。
私も未だに土日は現場に出ているんですよ。お客様に必要とされることは、何よりの喜びです。

まだ現役で施術をされているんですね!お客様に必要とされ喜びを感じられること以外に、現場にこだわる理由はありますか?

お客様のニーズは現場でしかわからないと思います。このコロナ禍の2年でもお客様の生活スタイルも変わりましたよね。でも直接話を聞いてみないと、どのように変わったのか、どんなことが求められているのかはわかりません。

またコロナ禍において、ビューティービジネスは、コミュニケーションビジネスといえるのではないかと考えるようにもなりました。というのも、私が経営している直営店・FC店の売上を調査したところ、コロナの影響で売り上げが下がったお店がほとんどでしたが、現状を見ると、コロナ前の状況まで回復してきているお店も多くあります。それらのお店には、技術者とお客様との間に深い信頼関係が築けているという共通点があったんです。技術力が高いことももちろんですが、お客様とのコミュニケーションがどれだけ取れているか、絆が深まっているかが重要なんだと実感させられました。現在学校の方でも、コミュニケーション力向上のための授業を月1回実施しています。

お客様との絆を深めること以外に、このコロナ禍で生き残るためのポイントはありますか?

まずは、安心・安全・正確な技術。トラブルが起きないことが基本です。続いて、トレンド・流行。そして、“似合う”ということ。似合わせ方がテクニックだと思うんです。これらのテニクックを前提として、お客様との絆を深める。それが、ファンをつけてリピートを取るために大切なことではないでしょうか。

指名率が高くなると、売り上げが上がり、生活も豊かになる。いくら技術力があっても、お客様に愛されなくては意味がありませんからね。
お客様にとって、技術者に技術があるのは当たり前。気分良く、気持ち良く施術を受けたいというのが今のお客様のニーズだと思うので、やはりコミュニケーションは大切です。

日本まつ毛エクステンション認定機構 理事長としての業務

井出氏インタビュー

日本まつ毛エクステンション認定機構の理事長に就任されたのはいつですか?

2018年に2代目の理事長として就任しました。

理事長として、どのような仕事をされているのでしょうか?

井出氏インタビュー1日本まつ毛エクステンション認定機構の使命は、大きく分けると、安心安全の技術の普及加盟会員のサロンの繁栄の2つです。

まずは、安心安全の技術や道具を世に広めていくこと。技術や道具も日々進化しているので、消費者にとって最善のものを提供していくことが役目です。関連して、正しい知識を教育することも重要な仕事です。教育委員会で教育のベースを作り、検定という仕組みで落とし込んでもらう。検定の取りまとめは、検定委員会という組織で行っています。

もうひとつは、日本まつ毛エクステンション認定機構に加盟する会員のサロンの繁栄をサポートすること。加盟会員なくして、機構は永続ができないからです。各委員会や講師会などでマネジメントの勉強を企画するなどしています。

機構が行う業務ごとに委員会等を作り、それぞれの委員長を中心に業務を行っていますが、全体の方向性を理事会で決めてまとめていくのが理事長の私の仕事です。

井出さんが考えるアイラッシュ業界の未来とは

これからのアイラッシュ業界で注力したいことは?

日本は少子高齢化社会。私たちが対象としている人口のパイは減少傾向にあるということをベースに物事を考えなければなりません。このような状況なので、高付加価値をつけて、高単価でやっていかないと生産性はなかなか上がらないと思います。

例えば、マスク時代の今だと、マツエクだけではなくて、まつ毛パーマやアイブロウなどのアイゾーンメニューで付加価値をつけて、お客様に納得いただくことが大切だと考えます。

また人口ボリュームのある高齢女性向けメニューを展開することもいいかもしれないですよね。高齢の方たちが大事にしていることは、やはり健康ではないでしょうか。健康のためにプールやジムにいく、でもつけまつ毛がと取れてしまう…目まわりはいつもキレイでいたいのに…そんな要望に応えるナチュラルなデザインのマツエクもこれから需要が高くなるだろうと考えています。このように人口減少を念頭に置いたビジネス戦略 が、これからのアイラッシュ業界では重要となるのではないでしょうか。

これからのアイラッシュ業界を担っていく技術者へ伝えたいことは?

エクステをつけるだけでは、作業員なんです。そういう技術者になってはいけないと思います。未だに、「何分で何本つけられたから一人前なんだ」なんて言われる方も多いのではないでしょうか。
そうではなくて、お客様を「より美しくするには」「より若くするには」「より健康にするには」どうしたらよいかを考え、それを前提としてトレンドと似合いを提案できる技術者がこれからは絶対に必要とされます。 

お客様から必要とされるためには、自分の技術がお客様の役に立たなければならない。役に立つとは、お客様のニーズに応えられているということ 。そして、お客様のニーズをキャッチするためには、コミュニケーションを取らないとわかりません。しっかりとニーズを引き出すことができれば、お客様の希望通りに仕上がるはずです。

技術者の技術に対して満足評価をしたお客様に対し「どこが上手だった?」と質問すると、大半の人が「私の希望通りだった」と答えます。つまり、お客様にとっては自分の希望通りになること=技術が上手ということなんです。自分の希望通りになると、お客様はハッピーになります。施術を終えたお客様を笑顔に、そして元気にするのが、技術者の仕事だと思います。

人は他人から必要とされたり、役に立てたりすると幸せを感じますよね。技術者も自分を指名してくれるお客様に囲まれて仕事ができれば、これ以上に幸せなことはありません。ファンがつけば、収入も増えて人生が楽しく豊かになります。もちろんお金がすべてではありませんが、アイラッシュ業界の技術者もこのような考え方で生きていくのがよいのではないでしょうか。

私自身、18歳から現役で働いていますが、1番古いお客様は50年近く通ってくれています。40年、50年通ってくれるお客様をつけることがアイラッシュ技術者にもできます。ぜひお客様のニーズに応え、元気に笑顔にすることを大切にしてみてください。

まとめ

理容師から、美容、エステ、まつ毛エクステへと業務を拡大し、現在は日本まつ毛エクステンション認定機構 理事長をはじめ、各界のさまざまな組織の長を務められている井出さん。経営理念に掲げる「お客様に喜ばれ 愛される 人づくり・店づくり」のとおり、お客様に喜ばれる技術者を育てること、そして安心安全確かな技術を伝えることに注力されていることがわかりました。
特にこの日本まつ毛エクステンション認定機構では、理事会、そして講師会から様々な意見を出し、この業界のさらなる発展を目指している様が伺えました。
井出さんの教えが多くの技術者に広がっていく将来を期待せずにはいられません。211017Euk

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