[連載] ラッシュリフトを科学する 03[毛の性質(親水性・疎水性)]LASHLIFT Innovation Lab

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ラッシュリフトを科学する 03[毛の性質(親水性・疎水性)]

第3回テーマ 「毛の性質 ― 親水性・疎水性」

←第2回 ラッシュリフトを科学する[ウェーブ効率]はこちら

Beauté記者

前回のウェーブ効率の話、とても興味深かったです。今回は、まつ毛をコップに浮かべる試験について説明いただけるんですよね。とても楽しみです。

清水

はい。今回は毛の性質(浸水性・疎水性)を身近に観察できる簡単な方法からご説明します。今回お話する知識は、薬剤の選び方や放置時間の考え方にも繋がります。

Beauté記者

それが“コップにまつ毛を入れる実験”ってやつですか?

清水

そうです。紙コップに水を張り、抜けたまつ毛を10本入れてみてください。1時間ほど経ってから観察すると、不思議なことに、健康なまつ毛であっても必ず1〜3本は浮いてくる毛が出てきます。しかも、長さや太さは関係ありません。同じ人のまつ毛なのに、浮くものと沈むものが混在するのです。

清水さん

三倉

つまりこれは、親水性と疎水性を確認する実験ですよね。

清水

はい。毛髪理論には、親水性と疎水性という特性があるとされています。毛の分子構造の違いによって、親水寄りか疎水寄りのどちらかに傾いた特性を持ちます。親水性とは“水になじみやすい特性”、疎水性とは“水をはじく特性”のことです。

親水性・疎水性

三倉

料理でイメージするとわかりやすいですね。親水性は“醤油”。水を加えるとすぐに馴染み薄まります。一方、疎水性は“油”。水をはじいて混ざりません。

清水

そうですね。まさにそのイメージです。まつ毛にも同じような特性があります。しかも面白いのは、同じ人のまつ毛でも毛ごとにその性質が違うということです。浮く毛と沈む毛が出てくるのは、その違いを示しています。

Beauté記者

じゃあ、浮いた毛は疎水性、沈んだ毛は親水性ってことなんですね?

清水

はい。一般的に、浮く毛は油分が多くて水を弾く、つまり疎水寄りです。逆に沈む毛は水と馴染みやすい親水寄りの毛。毛の中には“水を吸いやすい部分”と“水を弾きやすい部分”が混在していて、その割合の違いで毛ごとに性質が変わると考えられます。

三倉

なんか、不思議ですよね。どうして、同じ方のまつ毛でも、こういう変化が起こるのでしょうか?

清水

メカニズムの解明はまだできていません。ですが、まつ毛の構造に違いがあることは把握しています。コラム第1回で断面の話をしましたが、普段から気になるまつ毛は大学の顕微鏡で断面を確認しています。私の場合、現場の毛質判断でこれはS1寄りこれはS2寄りと、だいたい区別がつきます。そこで、S1寄りだと思う毛とS2寄りだと思う毛をそれぞれ採取して、大学に送り、断面を比較しました。すると、はっきり違いが確認できました。

←第1回 ラッシュリフトを科学する[まつ毛の構造]はこちら

三倉

すごい!!どんな違いがあるのですか??

清水

S2のまつ毛は、断面に空洞化や、亀裂が生じています。

三倉

なるほど!!まつ毛内部の空洞化や亀裂は、S1、S2にどのような関係があるのですか?

清水

これは、あくまでも私の推測です。まつ毛内部に生じた空隙に油分が入り込み、それが酸化・硬化することで、毛の性質がより疎水寄りに傾く可能性があるのではないかと考えています。

三倉さん 清水さん

三倉

確かに、そのロジックはあり得そうですね!!

清水

それと、面白い違いもあります。大学にまつ毛を送る際、先入観をなくすために、S1、S2の情報は隠した状態で教授に送ります。教授は断面撮影のためにまつ毛をカットするのですが、サンプルNo◯◯のまつ毛が硬くて切断が大変だった!というコメントをくださいます。切断が大変な硬いまつ毛は、ほぼS2寄りだったりします。体感値でわかるくらい、違いがあるのも面白いですよね。

三倉

面白いですね!!そして、すごい!!体感値も評価方法の1つですもんね。記録を残せば、エビデンスにもなりますし。よくここまで分析できましたねー!!

清水

長年の試行錯誤と、大学の協力によってたどり着きました。また、写真については、大学との契約などがあり⋯⋯見せられなくてすみません。

Beauté記者

写真は仕方ないですよね。研究のエビデンスですし、ここで公開できないのは当然です。お話が聞けるだけでもありがたいです。

清水

ご理解いただき、ありがとうございます。また、紙コップの実験だと、年齢が高くなるにつれて浮く本数は増える傾向があります。これは毛穴の変化でまつ毛内部の空洞化が進み、その空洞に油分が入り込んでしまうことが一因と考えられます。

三倉

年齢を重ねると毛質も変わるということですね。

清水

清水さん

はい。あとは単純にカールのかかり具合からも読み取れます。実は、ウォータープルーフのマスカラやアイライナーを日常的に使用されている方よりも、お湯で落ちるマスカラを使用されている方や、アイライナーをあまり使用されない方のほうが、ラッシュリフトが素直にかかりやすいケースが多いと感じています。(親水寄りの毛が多い。)

清水

ウォータープルーフタイプのマスカラは、汗や水に強くするために、まつ毛の表面に強い膜を作る処方になっています。この膜は水や油を弾く性質が強いため、まつ毛が疎水的な状態になりやすく、水分やラッシュリフト剤が内部に入りにくくなることがあります。

さらに、長時間にじまないように乾きやすい処方になっているものも多く、1日中つけていることで、まつ毛が本来持っている水分を保ちにくくなる場合もあります。そのため、日常的にウォータープルーフのマスカラを使用されている方は、まつ毛が乾燥気味になりやすく、ラッシュリフトの反応や仕上がりに影響が出ることもあります。

一方でウォータープルーフのメイクをされている方でも、クレンジングを丁寧に行い、目元のケアが行き届いている場合は、比較的きれいに巻き上がる傾向があります。

三倉さん 清水さん

三倉

ちょっと難しい成分の話になりました。要するに、ウォータープルーフ(耐水性、防水機能)のマスカラには被膜を形成しやすい成分が含まれる。それが疎水性の膜になり、まつ毛が疎水寄りになる原因だと考えられる。ということですね。

清水

はい。簡単に説明するとそういうことです。

三倉

結構深い話になってきたました。別の視点で話を進めていきましょう。毛の状態が違えば、当然、薬剤の反応の出方にも影響しそうですね。

清水

その通りです。ラッシュリフト剤は処方の違いで“作用”が変わります。浸透のしやすさ、反応の立ち上がり、仕上がりの質感など、差が出ます。更に、毛質によっても作用が変わってきます。

三倉

つまり、浮く/沈むみたいに毛の状態が違うと、薬剤の“入り方”や“効き方”が変わって、結果も変わってくる。そういう整理でいいですね。

清水

はい。その理解で大丈夫です。この実験の価値は、毛の状態に差があることを直観で掴める点です。

Beauté記者

なるほど…。アイ業界で、ここまでまつ毛を分析している人はいませんね!!

三倉

まつ毛博士ですね!!

三倉

ここまでで、S1/S2の話がだいぶ整理できましたね。

Beauté記者

そうすると、次は薬剤の話ですよね。

三倉

はい。S1/S2の考え方を踏まえると、じゃあラッシュリフト剤って何でできていて、どう設計されているの?という話が避けられません。次回(第4回)は、ラッシュリフト剤の基本から整理していきましょう。

必要知識 | 親水性・疎水性とまつ毛の毛質

毛の構造と親水性・疎水性の領域

毛は、構造ごとに「親水性(S1)」と「疎水性(S2)」の領域を持っています。
本図はイメージを把握するための抽象的な表現です。

毛の断面図(親水性・疎水性領域のイメージ)

▲毛の断面図(親水性・疎水性領域のイメージ)

部位 性質
キューティクル外側 S1(親水性)領域
キューティクル内側 S2(疎水性)領域
コルテックス外側 S1(親水性)領域
コルテックス内部 S1とS2が混在する領域

つまり毛は「水になじみやすい部分(親水性)」と「水をはじきやすい部分(疎水性)」が複雑に組み合わさっており、毛質によって薬剤の反応が変わります。

これらは毛髪理論として一般的に知られていますが、まつ毛については未解明の部分が多いのが現状です。

紙コップ実験で見えること

清水さんは紙コップにまつ毛を浮かべる実験によって、まつ毛にも親水性・疎水性の違いがあることを確認しています。

親水性・疎水性 実験例

実験の見方
  • 沈む毛 → 親水寄り(S1)
  • 浮く毛 → 疎水寄り(S2)

同じ人のまつ毛でも、浮くものと沈むものが混在します。これはまつ毛ごとにS1・S2の割合が異なることを示しています。

毛質は後天的にも変化する

まつ毛・頭髪ともに、加齢や生活習慣によって毛質は変化します。

  • 清水さんの研究では、疎水寄りのまつ毛において断面の空洞化や亀裂が確認されています。
  • 空洞に油分が入り込み酸化・硬化することで、毛がより疎水寄りに傾く可能性があると考えられます。
  • 加齢によって浮く本数が増える傾向があり(紙コップ実験)、後天的な影響が示唆されます。

親水・疎水の毛質特性には、先天的な要因だけでなく、加齢・メイク習慣・ケアの状況など後天的な影響も含まれます。

三倉さん

清水さん

Beaute記者

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