アメリカで最も受賞歴の多い施術者|彼女が導き出した「効率的」なサロン経営とは?TB Kim(ティービー・キム)さんへインタビュー

この記事をシェアする

ニューヨーク州マンハッタンにあるマツエクサロン「Blue Geisha Lashes(ブルー・ゲイシャ・ラッシュズ)」のオーナーであり、ラッシュブランド「Volume Lashes Co(ボリューム・ラッシュズ・コー)」の代表取締役を務めるTB Kim(ティービー・キム)さんにインタビュー。TBさんは数多くの国際大会に出場し、特にボリュームラッシュ部門において輝かしい功績を残されているアメリカで最も受賞歴の多いアイラッシュ施術者でもあります。そんなTBさんに、ボリュームラッシュの魅力やTBさんが考える日米のマツエクユーザーの意識の違い、さらにはサロン経営についてをお聞きしました。

経営者プロフィール&現在の事業内容

【経営者プロフィール】
TB Kim(ティービー・キム)
ラッシュブランド「Volume Lashes Co」創業者兼代表取締役
マツエクサロン「Blue Geisha Lashes」/ニューヨーク・マンハッタン オーナー
NYCボリュームラッシュカップ主催者

サロン創業時からいち早くボリュームラッシュを取り入れ、当時のニューヨークでも珍しいボリュームラッシュ専門店としてオープン。
2018年からマツエクの国際大会に参加し、わずか8ヶ月間で11個もの賞を獲得するという偉業を達成。マツエク業界のオスカーといわれる「NALA Award」では、マツエクサロン部門・マツエク技術部門・ラッシュアーティスト部門・エデュケーター部門でトップ 5にラインクイン。
2019年からは、大会の審査員として国際的に活躍するほか、カンファレンスでスピーカーとして登壇。また、オンライン世界大会である「NYCボリュームラッシュカップ」を主催。また講師としても活躍し、国際大会にて数々の受賞者を輩出している。

2020年には「Volume Lashes Co」の代理店が日本にでき、現在はアメリカと日本を中心にブランドを展開している。

国際大会に数多く出場し結果を残してきた_その背景にある思いとは

マツエクに興味を持ったきっかけを教えてください。

元々エステに興味があり、ホームスパをやりたいと思っていたんです。マツエクはホームスパのオプションのひとつとしてやってみようかな、くらいの軽い気持ちではじめたんです。初めてマツエクを装着したときに「わっ!マツエクいいな!」と、一気に惹かれて大好きになりました。

マツエクをすると、顔がガラッと変わりますよね。それまで知らなかった自分の魅力を発見したような「自分にもこんな新しい雰囲気が作れるんだ!」という感じ。つけまつげやマスカラとは明らかに違う、マツエクならではの良さを実感したんです。まつげに自信のある方でも、普段のメイクでマスカラをたくさん塗る方は、絶対マツエクにハマると思います。

TBさんはボリュームラッシュ専門サロンを運営されていますが、数あるメニューの中でもなぜボリュームラッシュを選ばれたのでしょうか?

ボリュームラッシュを初めてInstagramで見たときに、その見た目の違いにすごく驚いたんです。自分自身がボリュームラッシュの魅力にどっぷりハマり、そこから探求心の赴くままボリュームラッシュのスキルを磨いていきました。そして、知れば知るほど、クラシック(シングルラッシュ)よりボリュームラッシュの方が魅力的だな、需要があるなと感じました。

しかしメニュー化した当初は、ボリュームラッシュの施術に時間がかかることがネックでした。ボリュームラッシュ自体はすごく魅力的なのに、ファンを作るのにとにかく時間がかかるのでコスパが悪いんです。施術時間がかかると、お客様も長時間ベッドに横になったりと、辛いことも多い。そこで、事前に作っておいたファンを使って施術をしてみたんです。すると、お客様は時短でボリュームラッシュができ、満足感が高まりますよね。

そんなときにプリメイドと出会い、これを使えばボリュームラッシュを大々的にメニュー化できると確信しました。プリメイドがあったからこそ、ボリュームラッシュ専門店を始められたといっても過言ではありません。とはいえ、私のサロンにはハンドメイドファンのメニューももちろんあります。ハンドメイドはメガボリュームなどの高価格帯メニューで展開し、プリメイドのメニューと差別化しています。

日本では近年、ナチュラルなデザインが好まれる傾向にあるのですが、ニューヨークでボリュームラッシュの需要が高いのは、欧米の方は元々まつげが長く、毛量も多いからなのでしょうか。

私のサロンはコリアンタウンにあり、インスタグラムでもアジア人の動画や画像をアップしているのでアジア系のお客様が多いんです。アジア人の目とまつげは、パーツ的に高い技術が求められるんです。だからこそ、口コミが口コミを呼んで、今はアジア系のお客様の割合が増えています。

また勘違いされがちなんですが、本数が少ない=ナチュラルではないんです。クラシックを例にあげると日本では、両目で80本というメニューもあるようですが、私のサロンでは片目85本が1番ライトなメニュー。それでもすごくナチュラルなので、多くのお客様は片目100本を選ばれます。美しく見せるには、ある程度の密度が必要です。

ボリュームラッシュも、1番おすすめするのは片目70~80束のミディアムボリューム。日本の方からすると、かなり派手だと思われるかもしれません。でもこの本数がないと、密度がなく、締まらずいびつな仕上がりになってしまうんです。
日本では施術者の中にも、「ボリュームラッシュは派手である」や「毛が細いほど、束が少ないほどナチュラル」といったデザインへの固定概念を持つ方がいるのではないでしょうか。施術者側がお客様の顔に合うボリュームラッシュのデザインを提供できていないため、お客様がせっかくボリュームラッシュを試していただいても、満足度の低い仕上がりになってしまう…。これが、日本でなかなかボリュームラッシュが浸透しない大きな理由のひとつだと思います。

実際に私がボリュームラッシュのデザインを研究していた時に気づいたことを具体的にお話しします。ひと口にボリュームラッシュといっても、デザインにはさまざまな種類があります。例えば、デザインAを好むお客様にデザインBを提供してしまうと、気に入らずクラシックラッシュへ戻ってしまうのです。しかし、このお客様の好みを見極めて最初からデザインAを提供すれば、その後クラシックに戻ることはないといえるほどボリュームラッシュに定着します。私のサロンでボリュームラッシュを試してからクラシックラッシュに戻る方はほとんどおらず、いたとしてもそれは経済的な面でという方のみ。

このボリュームラッシュのデザインは、ドールやキャットアイなどスタイルの話ではなく、毛の細さ、ひとつの束に使う毛の本数、片目に装着する束数。ファンがすべて開いているものを使用するのか、閉じているものを使うのかなど。閉じているものを使うのであれば、何割混ぜるとどのような見た目になるか、アウトラインは揃えるかそれともワンホンのように突き出た軸を入れるかなど、無数の組み合わせからお客様に似合ったデザインを提案します。

ところが、ボリュームラッシュを0.07mmの開いたファンかつ3Dでしか提供していないと、似合わない・好みのデザインに仕上がらないお客様がいらっしゃって当然です。このように提供出来るデザインの種類が少ないことは、ボリュームラッシュの顧客が定着しない大きな原因になるでしょう。そのためお客様が定着せずに悩んでいる方々は諦めずにもっとたくさんのデザインを学び続けると良いと思います。

日本にボリュームラッシュがあまり浸透しないのは、専門店の数が少ないことも理由に挙げられると思います。それは、プリメイドの商材があまり普及していないことも関係しているのでしょうか?

ハンドメイドであることがステイタスであり、高い技術力があることの証で、プリメイドを使うことは技術の低さを露呈しているようなもの、というネガティブな意識を持つ人も多いのかもしれません。これは日本でも、もちろんニューヨーク、アメリカでも一緒です。

しかし昨今、マツエク業界でプリメイドの良さが浸透してきていますよね。そんな業界の流れから、「プリメイド使ってもいいんだ!」と取り入れはじめた人も多いと思います。

実は、私がボリュームラッシュ部門でコンペに参加し、受賞を目指したのも、プリメイドの良さを伝えることが目的だったんです。というのも、ハンドメイドの技術がない人が「プリメイド良いですよ!」と発信しても説得力がありませんよね。多くの受賞歴があり、ハンドメイドを極めた私があえてプリメイドを使うことで、プリメイドの魅力、メリットがあることを伝えたかったんです。

奥が深いからこそボリュームラッシュは面白い。そしてビジネスにつながる

ボリュームラッシュに力を入れているサロンが、プリメイドを導入することで得られる具体的なメリットを教えてください。

ボリュームラッシュの施術には高い技術と時間を要します。そのため、スタッフの確保は容易ではありません。そもそも高い技術のある人は、1人でサロンをやっている場合が多いですし、トレーニングをするにも時間とお金がかかりますよね。トレーニングの時間を短縮すると、ちゃんとした施術ができずお客様が取れない…。また、技術力のあるスタッフがいたとしても、そのスタッフ頼みの綱渡り状態になってしまうことも。ボリュームラッシュの施術において、クオリティの統一とスタッフの確保は大きな課題です。

その点、プリメイドを導入すれば、極端にいうと今週トレーニングして、来週お客様に施術ができます。つまりプリメイドは、ボリュームラッシュのクオリティの統一・施術時間短縮・売上アップに貢献するんです。中には、プリメイド商材の値段の高さがネックだと人もいるかもしれません。しかし、サロン運営で1番お金がかかるのは人件費。スタッフを確保し、トレーニングをし、クオリティを統一する方がコストがかかると私は考えています。
ぜひ日本でもプリメイドを活用したボリュームラッシュで、ビジネスチャンスを見出してほしいと思います。

業界一丸となってクオリティを重視する_肝心なのはマーケティング

今後のマツエク業界はどのように展開していくべきだとお考えですか?

私のサロンでは、クオリティやある程度の価格を担保することを重視しています。実際、コロナ禍のパンデミックで経営が苦しいときにも、価格を下げることはしませんでした。それはブランドの価値を下げないための重要な策であり、これからでも続けていかなければならない課題でもあります。アメリカにも粗悪な施術をする格安店がありますが、勉強会などを開催し、全体のクオリティを上げられるよう活動しています。

日本ではマツエク離れが進んでいると伺いました。その原因はマツエクをオプションメニューとして扱うサロンが増えていること、価格破壊によるものが大きいのではないでしょうか。マツエクの施術は、カウンセリングをしてデザインを決めるだけでも時間がかかるものです。

マツエクブームを戻すためには、高いクオリティで美しいマツエクを提供するしかない。そのためには、業界全体で協力する必要があるでしょう。協力しないと、消費者の目を変えることはできません。また、クオリティを上げることとは、単に技術の統一を図るのではなく、マーケティングも大変重要です。

例えば、業界全体で動くことが難しいのであれば、優れたアイラッシュ施術者がタッグを組み、メディアなどで積極的にマーケティングをしてみてはいかがでしょう。日本で主流の「マツエクはこんなに安い!」ではなく、「従来のマツエクとは一線を画す、ハイクオリティマツエク」というマーケティングの方が実現しやすいかもしれません!

最後に、TBさんがお仕事をされるうえで最も大切にされていることはなんでしょうか?

お客様にとって1番大切な「クオリティの担保」です。ビジネスとしては、どれだけ売上を作ることができるかということを重視しています。ビジネスをするにあたり、ちゃんと儲かる仕組みになっているかは最も大きな課題。より高価でより良いサービスを提供することはもちろん、無駄なお金を省いて、効率よく利益を得ることができなければビジネスは続けられません。

また長いスパンで考える視点も大切です。例えば、速さだけを重視して施術をしたとします。すると、施術自体は時間が短縮され効率が上がったように見えるかもしれませんが、スキルに見合わないスピードで施術したことでクオリティが下がる、評判が落ちる、というように長期的に見ると非効率的な行動であることが分かります。このように目先のことだけでなく、その行動がどんな結果につながっていくのかまで考えたうえでの効率を上げられるよう努めています。

まとめ

国際大会のボリュームラッシュ部門で数多くの賞を受賞されたTBさん。その目的は、プリメイドのブランディングのため。世界に認められたボリュームラッシュの施術者があえて使っているものとして周知され、プリメイドの格が急上昇したことはいうまでもありません。
目先のことだけでなく、長いスパンで見たときにどのような効果が得られるのか、ちゃんと利益を作れるビジネスになっているのかを常に考えながらお仕事をされていることがよく分かりました。彼女のマーケティングのアイデアや思考を取り入れることは、日本に再びマツエクブームを起こす近道かもしれません。220617Euk

この記事を読んだあなたにおすすめの関連記事

この記事をシェアする