未経験者の積極的な採用と8割経営が人材定着のカギ!株式会社nicott代表取締役 田村雅也氏へインタビュー

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創業6年目にして、リピート率90%超えの人気マツエクサロンを複数展開する「株式会社nicott」代表取締役、田村雅也さんへインタビューを実施しました。実は、元々コンサルティング会社に勤められていた田村さん。自身が経営するマツエクサロン1号店をオープンしたその翌月、コンサルティング会社を設立され、現在も二足の草鞋で活躍する異色の経歴の持ち主です。田村さんのマツエクとの出会いや、コンサルのプロから見たアイラッシュ業界の未来、そして仕事をする上で大切にされていることなど、詳しくお聞きしました。

【経営者プロフィール】田村 雅也さん

株式会社nicott代表取締役
株式会社のぞみコンサルティング代表取締役
田村 雅也(たむら まさや)さん

大学卒業後、東証一部上場の会計系コンサルティング会社「株式会社F&M」に入社。確定申告・資金繰り・労務相談などの業務に従事し、同社の最年少部長に昇格。その後、「船井総合研究所」に入社。入社後は美容室やエステなど美容業界をメインとしたコンサルティングに携わり、「ビューティービジネスチーム」の最高責任者に就任。
コンサルティング会社退社後、2016年12月に「株式会社nicott」を設立し、1店舗目となるマツエクサロンを開業する。2020年よりフランチャイズ事業を開始。リピート率が90%を超え、創業6年で直営のマツエクサロン12店舗、フランチャイズ7店舗を展開する(2023年3月時点)。
独自のマーケティング&マネジメントシステムで、スタッフ5名で500万円以上の売上を達成。全店舗で生産性80万円(1人当たりの売上)以上を確保している。

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マツエクとの出会い ~コンサルティング会社社員からマツエクサロンオーナーに~

――――コンサルティング業界に従事されていた田村さんがマツエクサロンをオープンするに至った経緯を教えてください。

前職では主に美容室のコンサルに携わっていたんですが、低賃金で離職率も高く、美容業界自体が不人気になっていっているなと常々感じていました。そんな状況を目の当たりにし、僕ならこうするのに、こうすればうまく行くのにと、さまざまな構想をめぐらせ、その想いを実現するための場として自らマツエクサロンをオープンしました。

――――ネイルでもヘアでもなく、マツエクを選ばれた理由は?

コンサル時代から感じていることなのですが、美容室のオーナーってアイラッシュ業界に対して良い印象を持っていない方が多いんです。なぜなら、マツエクサロンは美容師を辞めた人が行くところというキャリアダウンのイメージを強く持っているから。「マツエクサロンは全然稼げない」「人材も微妙」といった美容室オーナーの意見がある中で、僕自身はヘアよりマツエクが劣っているとは決して思いませんでした。

確かに、一からアイラッシュ施術者になる人よりも美容室を辞めてマツエクサロンに行く人の方が圧倒的に多い。だからといって、キャリアダウンとイコールではありません。僕なら、そんなアイラッシュ施術者に対する負のイメージを少しでも良くできるのではないか、と思ったのがマツエクを選んだ理由ですかね。

――――2016年に1号店をオープンされていますが、ご自身のサロンを持ちたいと考え始めてから実現するまでの期間は?

1年ぐらいですね。でも実は、1号店は一から立ち上げた訳ではなく、M&Aのサイトに売りに出ていたサロンを買い取ってオープンしたんです。当時、コンサル事業の方でM&Aを主軸にしたいと考えており、事業として展開するにあたって買う側・売る側、双方の気持ちを理解したいと思っていました。そこで、僕自身がサロンを買い取り、売上を上げることができれば、事業として成り立つなと考えたんです。

実際に自身のサロンを持ったことで、今までよりも業界のことに詳しくなれたと同時に、まだまだ伸びしろがあるにも関わらず大きなサロンが全然ないな、と感じました。M&A事業を展開するひとつの判断材料として始めたサロン運営ですが、まだまだ業績を伸ばせると考え、現在まで継続しているという状況です。

――――マツエクサロンのどのような点に伸びしろを見出されたのでしょうか?

まず、デビューまでの期間が短いこと、初期費用が安いことですね。そして、美容室に比べて競合が少ないことも挙げられます。マツエクサロンは個店が多く、地域で2~3店舗やっているサロンはたくさんあるんですが、50、100店舗という規模展開している会社ってほとんどないんですよね。おそらく今、アイラッシュ業界で1番店舗を持っている会社でも100~120店。それに対し、美容室だと800店舗とか。それくらい大きな差があるので、いわゆるニッチな業界ではあるけれど、1番を狙いやすい業界だと思います。

――――サロン展開には求人が欠かせませんが、何か工夫されていることはありますか?

一般的にアイラッシュ業界では、求人がネックといわれています。でも求人に難航するのは、経験者を取ろうとするからなんです。未経験者はいつ稼いでくれるようになるか分からない、教育にお金をかけるのがもったいないとの思いから敬遠されているようです。しかし弊社では、未経験者でも売り上げを上げられる教育法やメニュー構成を確立しており、未経験者を優先して採用しているので、求人には全く困っていません。未経験者は選びたい放題です。

――――未経験者にどのように教育しているのでしょうか。

独自の教育カリキュラムを構築していること、そして動画マニュアルを作っていることも弊社の特徴です。例えば、新人へ技術指導をする際にも、口頭だと人によってアドバイスする内容や観点って違うんですよね。そのため弊社では、動画マニュアルを用いることで教育の標準化を図っています。また、いつでもどこでも予習・復習ができることも動画マニュアルのメリットです。といっても、動画だけですべてを網羅できるわけではないので、トレーニングルームを作ったり、トレーナー制度を設けたりと、さらなる教育環境の整備に力を入れています。

また弊社では、月2回のみチャレンジできるテストに合格しないと、施術に入れないという決まりになっています。最低でも月間100~150名以上のモデルに施術を行い、皆そのテストに照準を合わせて技術を磨いていますよ。

――――時間をかけてもテストになかなか合格できず、メニューに入れない方もいるのでは?

テストはかなり細かい部分までチェックする厳しいものなので、中には合格できないスタッフもいます。そんなスタッフのために、パーマ・アイブロウ専門店を展開しているんです。弊社のメニューのカリキュラムは、パーマ→パリジェンヌ→アイブロウ→マツエク→下パーマ…という順番になっているんですが、挫折するのってやはりマツエクなんですよ。

半年で合格できる人もいれば、1年経っても合格できない人もいます。そうなるとモチベーションを保つのって難しいですよね…。なので、そんな人でも辞めることなく、パーマ・アイブロウ専門の施術者として活躍できる場所を提供しているんです。また、実際のところオーダーの比率がマツエク35%、パーマ65%くらいになっているんで、スタッフがマツエクのテストに合格できてもできなくても、サロンの運営上全く問題はありません。

施術者への思い ~ゴールは自宅サロンを開業することではない~

――――アイラッシュ業界で施術者として長く活躍するために大切なことは?

年相応の働き方をすることでしょうか。例えば、25歳と35歳でもアイラッシュ施術者としての働き方って全然違うんですよね。さらにいえば、施術者の最終的なゴールを自宅サロン開業としている人も多いようですが、果たしてそうでしょうか。時代も変わり、加齢によって体や目も衰えていく中で、お客様が付くのかというと疑問ですよね。そうではなく、どこかの組織に属しながらキャリアアップするなど、これまでと違った働き方を見つけていかないと、アイラッシュ業界で長く働くことって難しいと思います。

――――純粋に施術のみを行うアイラッシュ施術者としてやっていける限界の年齢は?

40代くらいまでじゃないでしょうか。そもそも、ヘアサロンだと指名率95%以上の売れっ子もいますが、マツエクサロンの指名率ってせいぜい30~50%なんですよね。まつげという小さなパーツへの施術であることや月に1度は取れてしまうことなどから、いくら施術者の技術が高くても指名率はなかなか伸びません。そんな状況なので、年齢を重ねてくると純粋に施術だけをして1人でサロンを運営するのは厳しくなってくると思います。実際に、廃業されている方のほとんどが個店さんです。なので、組織に所属し、チームで仕事をするという選択肢を持つことも大切だと思います。

アイラッシュ業界の未来 ~一般企業並みの待遇に引き上げていくべき!~

――――今後、アイラッシュ業界全体として繁栄するために大切なことは?

給与水準の引き上げや雇用環境の整備を行い、一般企業並みの待遇を提供していくべきだと考えています。美容業界の中での良し悪しではなく、一般社会と比べてどうなのかという視点を全員で持つことが重要!アイラッシュ業界は個店が多いため、未だに社会保険に入ってなかったり、平均賃金が低かったりするんですよね。アイラッシュ業界も一般企業並みに水準を引き上げていかないと、人が入って来ず、どんどん廃れていってしまいます。それを実現していくことが、サロン経営者の役目だと思います。

――――水準を引き上げることの他、アイラッシュサロンの経営者として重要視していることはありますか?

美容室・理容室業界ってブラックボックスがすごく多い業界なんですよね。評価も給与の計算方法もスタッフには知らせていないというサロンも多いようです。弊社では、給与の計算方法をバックヤードに掲示しているんです。なので、調べれば自店だけじゃなく、他店スタッフの給与まで予測できます。「同期の子や売上が高いあの人は、どのくらい稼いでるんだろう」と調べたら金額がだいたい分かって、それもまた原動力になるようです。つまり、情報をオープンにすることで、スタッフ同士が刺激し合い、切磋琢磨することで売上が上がるということもありますね。

また、給与の計算方法だけでなく、スタッフ間のトラブルの事例やその対応などもすべてオープンにしているんです。情報を伏せるよりオープンにした方が、スタッフ・経営者ともお互いに楽ですよね。情報の見える化は、サロンに人材を定着させるためには大切なことだと思います。

大切にしていること ~どうせやるなら楽しくやろう!~

――――田村さんが仕事をされる上で、1番大切にしていることは?

どうせ仕事をするんだったら楽しくしたいな、と思っています。「イヤイヤしなくていい!楽しくやろう!」という想いは常々スタッフにも常々伝えており、気持ち良く仕事をしてもらうための工夫もしています。例えば、人間関係のトラブルが起きた際にすぐに異動できるよう、弊社では地理的に近い位置に複数の店舗を展開しているんです。

また、弊社は残業・掛け持ち一切なし。売上目標もありませんスタッフに対して売上を上げろといったこともないです。だって、目標を追うのって疲れるじゃないですか。

――――コンサルは目標重視の世界。そんな世界に身を置かれている田村さんが売上目標を設定されていないということに驚きました!

コンサル業界のように雪だるま式に目標が増え続けていくシステムは、女性社会には合わないと思うんですよね。基準売上は設けているので、それさえクリアしたら何でもいいじゃん、というスタンスです。

また、皆が80%のパフォーマンスを発揮してくれたらOKという8割経営が僕のやり方です。120%なんて目指させないし、逆に想定以上のパフォーマンスを出したときには、「大丈夫?休みを取れよ」と伝えることも。先日も皆を喜ばせようと、リフレッシュ休暇の導入や土日休みを増やす提案をしたところ、「必要ありません」と(笑)最近では、こんな逆反発が起こることもしばしば。こちらが80%くらいできれば良いんだよと伝えていても、やっただけ給料も増えるので、皆結局がんばっちゃうんですよね。

それと、女性の多い職場だからこそ、誤解されることのないよう気を使っています。ドライと思われるかもしれませんが、スタッフとは適度な距離感を保ち、積極的にコミュニケーションを取ることもしません。コミュニケーションを取らなくても、会社が上手く回る仕組みを作っています。ただし、定期的にスイーツやお寿司などの差し入れをして、女性スタッフに喜んでもらえる工夫はしているつもりです(笑)

まとめ

目標達成を重要視するコンサル業界出身でありながら、自身が経営するアイラッシュサロンでは、目標なし!残業・掛け持ちなし!休日出勤なし!80%のパフォーマンスを出してくれたらOKという8割経営を実践されている田村さん。それは、サロンの運営や店舗展開には必要不可欠な人材である施術者たちに楽しく働いてほしいという思いから。また、アイラッシュ業界全体としても、人材の流入や定着を促進するためには一般企業並みの水準に引き上げることが重要だといいます。今後もサロン経営者兼コンサルのプロである田村さんのご活躍を期待せずにはいられません。

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