【病理解説シリーズ】まつげダニ編:生態や眼病を引き起こすメカニズムを調査!

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マツエクの不十分なケアが、眼病の原因になってしまうということは周知の事実です。一つのケースとして、「まつげダニ」の繁殖が挙げられます。「『まつげダニ』って聞いたことはあるけど、詳しいことはわからない…。」という人も多いのではないでしょうか?「まつげダニ」とはまつげの根元周辺に生息する顔ダニの一種です。では、私たちの目元にどのような悪影響を及ぼすのでしょうか?今回はまつげダニの生態や眼病を引き起こすメカニズムをご紹介します。

まつげダニとは一体なにモノ?

お客様に安心安全なマツエクライフを楽しんでいただくためにも、マツエクの装着が引き金で起こり得る「目のトラブル」についての正確な知識はしっかりと身に付けておきたいですよね。
2015年6月に独立行政法人国民生活センターから「後を絶たない、まつ毛エクステンションの危惧」が発表されました。この通達では、マツエクの施術を受けたことによる健康被害について報告されています。
この報告書によると、マツエクの施術を受けた人のうち、実に25人に1人が目やその周辺などに異変や違和感を経験したと記載されています。具体的な症状は、以下のグラフを参照してください。

画像出典:独立行政法人国民生活センター

アンケート結果の上位に見られる症状には、「目の痛みや異物感」、「目やまぶたのかゆみ」、「目の充血」、「まぶたの腫れ・湿疹・かぶれ」などがありました。

これらの不快な症状を引き起こす原因の一つに、まつげダニの繁殖が考えられます。その他にもアレルギーやドライアイ、ものもらいなどの眼病など原因はさまざまありますが、今回はまつげダニについて知識を深めていきましょう。

生態・不快症状を引き起こすメカニズム

まつげダニは顔ダニの一種で、正式名称をDemodex(デモデックス)といいます。和名では毛嚢虫(もうのうちゅう)毛包虫(もうほうちゅう)と呼ばれ、毛根や皮脂腺などヒトの皮膚に生息している寄生虫です。現在、ヒトに寄生するデモデックスは2種類が確認されています。
どちらも節足動物門クモ綱ダニ目ケダニ亜目ニキビダニ科に属するダニですが、多少違いがあるようです。では、それぞれの生態をご紹介しましょう。

学名:Demodex folliculorum(デモデックス フォリキュロラム)

大きさは0.3~0.4mm、幅0.05mm。
形は一般的に知られるダニとは著しく異なり、細長いイモ虫状であるのが特徴です。生まれてから死ぬまでの全生活過程(生活史)は卵→幼ダニ→前若ダニ→後若ダニ→親ダニの5つの段階からなります。全てのステージでヒトの毛根周辺部に寄生して生活しています。

学名:Demodex brevis(デモデックス ブレビス)

毛根周辺に生息するDemodex folliculorum(デモデックス フォリキュロラム)とは異なり、皮脂腺やマイボーム腺の深部に生息しているのが特徴です。
体長は0.15~0.2mmと短めであることからコニキビダニとも呼ばれます。繁殖活動も皮脂腺やマイボーム腺などで行います。

これらDemodex(デモデックス)は、頬や前額部、鼻、外耳道などの特に皮脂の分泌が盛んな部分でも繁殖しやすい傾向にあります。
肉眼で観察することは難しいですが、約40倍に拡大すると視認することができる程度の大きさです。まつげダニがいるかどうか確認したい場合は、光学顕微鏡や高倍率のルーペなどを用いると良いでしょう。
人体にとって、まつげダニが寄生すること自体はさほど問題ではありません。では、どのような場合に不快症状の引き起こすのでしょうか?

不快症状を引き起こすメカニズム

まつげダニは目元の皮脂などをエサにして生活しています。通常のクレンジングや洗顔などを行っていれば、まつげダニの影響で目元のトラブルが発生するということはないでしょう。
しかしマツエクを装着していると、マツエクのモチを良くするためクレンジングなどが不十分な状態が続いてしまうことがありますよね。
目元のトラブルを引き起こすキーポイントはまつげダニの生息密度の高さなのです!

不衛生な状態=まつげダニのエサが豊富ということを意味します。豊富なエサ場を得たまつげダニは、急速に繁殖する場合があります。まつげダニが大量繁殖すると、特殊な強いかゆみが発生します。すると、掻いたり、擦ったりしてしまいますよね。
掻く・擦ることが原因でドライアイやアレルギー性結膜炎といった、さらに辛い症状に繋がるケースもあるのです。
掻く・擦るという行動は物理的なエクステの取れやすさにも直結します。取れかかったエクステが角膜を傷つけてしまうこともあり、注意が必要です。

▼こちらの過去記事に目元のトラブルについてまとめていますので、ぜひご一読ください。

このようにまつげダニの大量繁殖が、目元に起こるさまざまなトラブルの引き金になってしまうことがわかりました。では、まつげダニの繁殖を未然に防ぐために、私たちはなにをすべきなのでしょうか?

まつげダニの繁殖を防ぐ方法

まつげダニが繁殖するためには大量のエサが必要です。そのためしっかりとしたケアを行い、彼らのエサとなる皮脂やメイク汚れを取り除くことでまつげダニの繁殖の予防することができます。
では、さっそくまつげダニの繁殖を防止するための3つのポイントをご紹介しましょう。

ポイント① メイク落としはマツエクに適したクレンジング剤で行う

皮脂やメイク汚れを取り除くためにクレンジングはかかせません。ただしマツエクに適したクレンジング剤を選びましょう。
具体的に、マツエクに適していないクレンジング剤とは、“油分”を含むものを指します。なぜならマツエクを装着する際に使用するグルーにも“油分”が含まれるためです。クレンジング剤に含まれる“油分”が、グルーの“油分”を分解し、マツエクを取れやすくしてしまう可能性があります。

市販クレンジング剤の成分を確認して使用するのも良いですが、マツエク専用に作られたクレンジング剤であれば失敗が無くベターです。クレンジング選びに迷っているお客様には、おすすめする理由を添えてマツエク専用クレンジング剤を提案してみましょう。

▼こちらの過去記事にクレンジングの選び方をまとめています。

ポイント② 目元の洗浄にはアイシャンプーを使う

マツエクを装着している場合、ゴシゴシ擦るとエクステが取れてしまうのでは?という思いから、しっかり洗うことができない心理もわかりますよね。そのため普段のクレンジングや洗顔とは別に、目元でも安心して洗うことができる、マツエク専用のアイシャンプーの使用をおすすめするのが良いでしょう。
アイシャンプーは目元に使いやすいよう、以下のような工夫が施されています。

  • 塩分濃度が涙と同等である
  • 涙に近い弱アルカリ性である

これらの理由で目に沁みにくく作られており、ゆっくり慎重に目元の洗浄を行うことができます。

▼こちらの過去記事でアイシャンプーについて紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

ポイント③ メイク道具も清潔に!

目元の洗浄をしっかり行っていても、メイク道具が汚れていては元も子もありません。メイク道具の中で汚れが気になるものを挙げてみましょう。

  • ファンデーションのパフ・スポンジ
  • メイクブラシ(化粧筆)
  • アイメイク用チップ      など

メイク道具が汚れていることは、メイク道具に繁殖した雑菌などを顔中に塗り広げているようなものです。さらにメイク時間や仕上がりの美しさにも関わるため、メイク道具のメンテナンスもしっかりと行うことが大切です。
どのアイテムも安価に買い替えることができたり、簡単に洗浄することができたりするものなので、今一度メイク道具にも目を向けてみましょう。

これら3つのポイントをしっかりと押さえ、まつげダニの繁殖を許さない清潔な目元を維持してくださいね!

まとめ

まつげダニについての知識が深まったのではないでしょうか?まつげダニの繁殖はマツエクを装着して“すぐ”に起こるものではありません。マツエクが取れてしまうことを恐れて、セルフケアが疎かになってしまうことが原因で起こってしまうのです。お客様が安心してセルフケアを行うことができるケア用品を提案することは私たちアイリストにできることです。まつげダニの繁殖防止に繋がるご提案を心がけられるといいですね。181014Euk

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