フロントアルバイトから経営者へ。技術者ではない強みを活かす株式会社Nornの代表・朝比紀江さんにインタビュー

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フロントアルバイトから経営者へ。技術者ではない強みを活かす株式会社Nornの代表・朝比紀江さんにインタビュー

美容サロンのフロントアルバイトから経営者へと転身を遂げた、「株式会社Norn(ノルン)」の代表取締役・朝比紀江さん。朝比さんは18歳のときに美容業界へ初めて足を踏み入れ、その後フロント事業部のマネージャー、トータルビューティーサロンの店長、そして代表取締役と、順調にキャリアを重ねてきました。技術者としての経験を持たないことを、あえて強みに変えてきたという朝比さん。今回は、独自の視点で新たな美容ビジネスの形を切り拓いてきた朝比さんに、目指している将来像などについて伺いました。

【経営者プロフィール】朝比紀江さんとは

フロントアルバイトから経営者へ。技術者ではない強みを活かす株式会社Nornの代表・朝比紀江さんにインタビュー

<朝比紀江さん>

  • 株式会社Norn代表取締役
  • 2002年 美容サロンのフロントアルバイトとして、株式会社Nornの親会社である「株式会社モードケイズ」に入社。
  • 2006年 フロント事業部のマネージャーに就任。
  • 2010年 完全分業制のトータルビューティーサロンの店長に就任。わずか2年で売上ナンバーワンの店舗へ。
  • 2016年 親会社が買収したアイサロンの社長に就任。
  • 2017年 社名を株式会社Nornに変更。10年で純資産額を倍に育て、現在に至る。

東京都・神奈川県・埼玉県など、関東エリアで8店舗のアイサロンを展開する朝比さん。株式会社Nornという社名は、北欧神話に登場する三姉妹の女神から付けたそう。過去・現在・未来を司るノルン三女神にちなみ、「生涯を通じてお客様の目元の美容に寄り添うパートナーでありた」という意味が込められています。

現在Nornはさらなる成長を目指し、女性に向けた施術だけでなく、メンズアイブロウの事業も強化しているとのこと。お客様らしさを引き出すデザインが注目を集めています。

▷株式会社Norn公式HPはこちら
▷株式会社Norn公式Instagramはこちら

18歳で美容業界へ。フロントアルバイトから社長に就任するまで

フロントアルバイトから経営者へ。技術者ではない強みを活かす株式会社Nornの代表・朝比紀江さんにインタビュー

―まずは現在の事業について教えてください。

Nornのほか、「Sourcil(シュルーシル)」「FemmePure(ファンピュール)」などの店名で、アイサロンを8店舗経営しています。年商は2026年4月現在で3億5,000万円ほど。スタッフは常時40~50名が在籍しています。経営者としては、節目となる10年目を迎えたところです。

―これまでの道のりはいかがでしたか?

18歳のときに、親会社であるモードケイズが美容サロンの受付を募集しており、求人に魅力を感じたためフロントアルバイトとして入社しました。ですが、当時は働くうえでの理想や目標みたいなものはあまりなくて。ただ当時のモードケイズは、年間5~6店舗を新規に出店する勢いのある会社でした。その中で仕事を通じて頼られる機会が増え、その期待に応えたいという思いから、目の前の業務だけでなく、改善点を見つけて提案するなど自ら動くようになっていきました。

その後、スタッフの数が増えていく中で、フロント業務と並行して人材育成を任されるようになりました。フロント事業部も立ち上がり、自然とリーダーシップを取る環境ができていったんです。正社員として登用されてからは、お客様にお叱りを受けたこと、褒めていただいたこと、店舗内での立ち回り方など、自らの経験を体系化した独自のマニュアルを作成したこともあります。

こうした働きが認められたのか、24歳のときにはマネージャーに抜擢。お客様と美容師の橋渡しのような役割を担いつつ、組織の構築や人材教育、サロンのマネジメントなども経験しました。

転機となったのは、28歳のころです。当時はヘアやネイル、アイ、ヘッドスパなど、多様なサービスを展開するトータルビューティーサロンが主流となりつつありました。しかし日本では、店長は美容師が務めるものという前提が強く、各専門職をまとめきれずに経営が難しくなる店舗も少なくありませんでした。そんな中、会社主催の海外ツアーで、弁護士やホテルの支配人といった“技術者以外”がトップに立ち、サロンをマネジメントしている姿を目の当たりにし、店長=美容師(技術者)という固定概念がなくなったことはひとつの転機だったかもしれません。

フロントアルバイトから経営者へ。技術者ではない強みを活かす株式会社Nornの代表・朝比紀江さんにインタビュー

その後、その経営手法に感化された社長から依頼され、帰国後には93坪という大型トータルビューティーサロンの店長として就任することに。これまでフロント業務で学んできたことをルール化するなどして、2年で社内売上ナンバーワンの店舗へと成長させることに成功しました。

店長として成果を出す中で、私は“5年で店長を卒業する”と決めていました。そしてその先に、自分自身で事業を立ち上げるという未来像を描くようになりました。ちょうどそのころ、モードケイズが関東圏で出店拡大に動いていたこともあり、自分が考えるトータルビューティーサロンのあり方を社内でプレゼンしてからは、とんとん拍子に話が進みました。プレゼンからわずか2週間後には技術者とともに上京し、モードケイズが買収したアイサロンの代表取締役に就任することになったんです。

ターニングポイントは新型コロナウイルス感染症の流行。改めて会社を見つめ直す期間に

―緊急事態宣言が発令され、アイサロンは休業せざるを得ない期間があったそうですね。

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あまり苦労を苦労と思ったことはありませんが、新型コロナウイルス感染症が流行したときは、初めて経験したことのない不安に駆られましたね。

ただ、いつお店を再開できるかは分からないけれど、そのタイミングが来たらスタートダッシュを切りたいという想いはあって。一旦、会社を見つめ直す期間にすることにしたんです。

そうした中、店舗の売上の中で唯一採算が取れていないメニューがあることに気付きました。それが、カラーエクステです。当時は9店舗を運営していましたが、カラーエクステの売上は全店合わせても年間で8万円ほど。その背景には、色彩感覚に自信がなかったり、お客様への提案に踏み切れなかったりするアイデザイナーの葛藤がありました。

フロントアルバイトから経営者へ。技術者ではない強みを活かす株式会社Nornの代表・朝比紀江さんにインタビュー

そこでアイデザイナーに、改めてスタッフ全員ができるデザインをレシピ化してもらうことにしたんです。そうすれば、お客様は写真を見て好みのデザインを選べますし、スタッフも自分の色彩感覚に頼らず、できているレシピを再現するだけなので提案もしやすいですよね。

肌なじみの良いカラーが登場し始めたタイミングということもあり、この戦略が見事に功を奏しました。リリースしたところ、瞬く間に人気メニューへと成長していったんです。年間30人ほどだったカラーエクステのお客様は3,000人近くまで増え、売上は2千万円ほどにアップ。市場の価値を拡大できたと感じる、大きな出来事として印象に残っています。

―職業価値を高めることに重きを置いていらっしゃるのも、そのときの経験がもとになっているとか。

フロントアルバイトから経営者へ。技術者ではない強みを活かす株式会社Nornの代表・朝比紀江さんにインタビュー

新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、政府から緊急事態宣言が発令されたとき、美容室とアイサロンは線引きされたと感じました。生活に必要なものとして営業が認められた美容室とは違い、アイサロンは贅沢品として休業を余儀なくされたからです。

たしかに社内でも、国家資格を持っているのは美容師もアイデザイナーも同じなのに、アイデザイナーは誇りを持って働いている人が少ない印象を受けました。こうした経験から、アイデザイナーの職業価値を高めて、お客様から必要とされる業種にしていきたいと強く考えるようになったんです。

フロントアルバイトから経営者へ。技術者ではない強みを活かす株式会社Nornの代表・朝比紀江さんにインタビュー

求めてくださるお客様がいるからこそ私たちはそのサービスを提供できますが、カラーエクステの事例がそうであったように、アイサロンからの働きかけで新たに生まれる市場もあります。

Nornという会社では、スタッフに将来の希望を持って働いてもらいたいですし、お客様のためにできることを常に考えながら、アイデザイナーという職業の価値をさらに高めていけるような組織づくりをしていきたいと思っています。

―経営者として、朝比さんが一番大切にしている価値観や判断基準とは?

大切にしている価値観は、「本業に専念すること」。今運営しているアイサロン、提供しているアイメニューにきちんと向き合い、その質を高めていきたいと考えています。
判断基準は大きく3つです。何か新しいことに取り組むときは「理念に合致しているか」「スタッフが習慣的に実行できるか」「ワクワクするか」ということを軸にしています。

目指すのは「職業価値を高める」こと。将来を見据えたNornの取り組み

フロントアルバイトから経営者へ。技術者ではない強みを活かす株式会社Nornの代表・朝比紀江さんにインタビュー

―今後の展望や、Nornとして挑戦していきたいことはありますか?

これまで実施してきた、トリートメントやアイシャンプーなどのアイケアに加えて、スタイリング文化を作りたいと考えています。私が子どものころ、祖母やその同世代の方々は、毎朝美容室で洗髪やヘアセットをしてもらうのが主流でした。

ですが、今はヘアアイロンやスタイリング剤を使って、自分で毎朝セットするのが一般的ですよね。その背景には、美容室に行くたびに、使うアイテムやセットの方法を教えてくれた美容師さんの丁寧なサポートがあると感じています。

アイサロンでも同じように、お客様のためにできることはないかと考え、思い付いたのがワンミニッツラストタッチプログラムです。Nornでは通称ラストタッチと呼んでいるのですが、このプロジェクトを始める前は、マンツーマンの施術でお客様に最適なアドバイスをできないまま時間が押してしまい、仕上がりだけを鏡で確認し、帰られるシーンをよく見かけていました。

フロントアルバイトから経営者へ。技術者ではない強みを活かす株式会社Nornの代表・朝比紀江さんにインタビュー

今回のプロジェクトは、施術後の1分間を使って、明日以降のお客様のために必要なアドバイスを全員で実施しようというのが根幹となっています。具体的には、施術が終わったあとにお客様自身でスタイリング剤を選んでもらい、スタイリングの方法をアイデザイナーがレクチャーするというシンプルな方法です。

お客様がご自身のまつげ1本1本にこだわられるような習慣が生まれたら、要望の質も上がり、アイデザイナーへのリスペクトも生まれるはず。アイデザイナーもお客様の期待に応えようと、さらに技術を磨いていくでしょう。こうした取り組みの中で新たな文化を創出できれば、職業価値も高まるのではと考えています。

―朝比さんが、組織づくりで心掛けていることを教えてください。

フロントアルバイトから経営者へ。技術者ではない強みを活かす株式会社Nornの代表・朝比紀江さんにインタビュー

売上を作ることよりも、人を育てることを意識しています。人材は単なる人の集まりではなく、会社に財をもたらす存在ですから。理念をもとにした教育を続ける中で、スタッフの成長が会社の成長にもつながっていくと信じています。

―最後に、現役のサロンオーナーやアイデザイナーへのメッセージをお願いします。

お客様に求められる職業であり続けられるように、そしてアイデザイナーの職業価値が高まるように、一人ひとりが意識を強く持ってもらえれば。Nornとしては、アイビューティーが生活の一部として必要だと認められるような経営をしていきたいですし、お客様の期待を超えていくことが目標です。今いるステージで、それぞれが職業価値を高めていくことを願っています。

まとめ

技術を持たないからこそ、仕組みを作り、人を育てることで、新たな市場価値を生み出してきた朝比さん。描いたビジョンに向かって努力し続けるひたむきさと、並外れた経営センスが、Nornを成長させてきたのだと感じます。「アイデザイナーの職業価値を高める」という朝比さんの挑戦は、アイデザイナーの新たな未来を切り拓いていくはず。Beauté編集部は、朝比さんのさらなるご活躍と、Nornとともに歩むアイデザイナーの皆さんの輝かしい前途を心より応援しています。

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