【マツエクグルーのマニアック解説】グルーの一番の弱点は「剥離」という力のかかり方!「剥離」と「ぬれ性」についての知識をマスターしよう

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マツエクが簡単に取れてしまうことってありますよね。あの現象の原因や対策を探るためには、まず「エクステに対する剥がされる力のかかり方」や「グルーのぬれ」など、グルーの基礎を理解する必要があります。そこで今回は、誰もが知る「グルーは引っ張る力には強いが、摩擦には弱い」ということを深堀りするとともに、グルーが接着するために必要な要因について学びます。

擦れに弱いマツエク

カウンセリングの際、施術後のマツエクの取り扱いについて、お客様にはいくつかの注意事項をお伝えしていますよね。注意事項の内容はサロンによって異なりますが、一般的には以下のような行為を控えていただくようお願いしているのではないでしょうか。

  • 目を強く擦る洗顔やクレンジング
  • エクステを強く引っ張る
  • ウォータープルーフマスカラの使用
  • ビューラーの使用
  • エクステに頻繁に触れるなどの刺激を与える行為 など


いずれもエクステが取れやすくなったり、自まつげを傷める可能性があったりするため、極力控えていただきたい行為ですよね。ちなみに、「ウォータープルーフマスカラの使用」に関しては、オフする際に強く擦ってしまったり、クレンジングの種類によっては、グルーを劣化させる可能性があったりするため項目に加えています。
しかし細かくみると、これらの行為による刺激は、“マツエクが比較的得意とする刺激”または“特に苦手とする刺激”などにカテゴライズすることができるのです。

【グルーの基礎知識】エクステに対する剥がされる力のかかり方

接着されたものに対する剥がされる力のかかり方は、大きく分けると「引張り」・「引張りせん断」・「割裂(かつれつ)」・「剥離」の4タイプに分類することができます。これらの専門用語をわかりやすく表現したものがこちら↓

引張り:上下に引っ張られる力

引張りせん断:ずれる力

割裂:端から引き剥がされる力

剥離:まくれ上がる力


では、それぞれの力のかかり方の特徴をグルーが剥がれにくい順でご紹介していきます。

引張り:最も剥がれにくい

画像元:スリーボンドグループ 技術情報 接着の基礎について

「引張り」とは、上下に引っ張られる力のかかり方のこと。マツエク用グルーは完全硬化すると強靭な接着力を発揮しますが、特に上下に引っ張られる力には強いという特徴があります。そのため完全硬化したマツエクに「引張り」タイプの力を加えると、グルーとエクステが接着されたまま、自まつげが抜けてしまう可能性があるでしょう。

引張りせん断:引張りの約2.5倍剥がれやすい

画像元:スリーボンドグループ 技術情報 接着の基礎について

「引張りせん断」とは、ずれる力のこと。グルーはずれる力にも比較的強いですが、「引張り」に比べると約2.5倍も剥がれやすくなってしまいます。

割裂:引張りの約10倍剥がれやすい

画像元:スリーボンドグループ 技術情報 接着の基礎について

「割裂」は、端っこから引き剥がされる力のこと。“裂く”というイメージです。例えば、エクステの根元にブラシやタオルの繊維が引っかかるなど、グルーとエクステの隙間に裂くような力がかかると、エクステが取れてしまう可能性が高くなります。

剥離:引張りの約40倍~1000倍剥がれやすい

画像元:スリーボンドグループ 技術情報 接着の基礎について

4種類の力のかかり方のうち、グルーが最も苦手とするのが「剥離」です。まくれ上がるとは、ものの端の部分が外側に向かって巻き上がること。マツエクを装着している目元をゴシゴシと擦ると「剥離」の力がかかってしまい、グルーは簡単に剥がれてしまいます。まくれ上がる角度などにもよるため数値に幅があるものの、「剥離」は「引張り」に比べて約40倍~1000倍も剥がれやすくなるといわれています。

剥がされる力のかかり方のタイプはどれに該当する?

前述のマツエクの取り扱いに関する注意事項において、それぞれどのタイプの力のかかり方が該当するかを考えてみましょう。

  • 目を強く擦る洗顔やクレンジング…「剥離」
  • エクステを強く引っ張る…「引張り」「引張りせん断」
  • ウォータープルーフマスカラの使用(ゴシゴシ擦ってオフした場合)…「剥離」
  • ビューラーの使用…「引張り」「引張りせん断」
  • エクステに頻繁に触れるなどの刺激を与える行為…「引張り」「引張りせん断」「割裂」「剥離」


上記のとおり、1つの項目について数種類の力が加わることも考えられます。特にエクステに頻繁に触れる、つまり「触りグセ」は触り方によっていろいろなタイプの刺激が加わるため、マツエクに最も悪影響を及ぼす可能性あるといえるでしょう。

グルーが取れやすくなる原理とは?

グルーは、4タイプの剥がされる力のかかり方のうち「剥離」が苦手ということがわかりました。しかしマツエクが取れやすくなるのは、剥がされる力のかかり方だけが原因ではありません。マツエクが簡単に取れてしまう場合には、そもそもグルーの接着能力が十分に発揮されていないというケースも考えられます。

【グルーの基礎知識】接着するために必要な「ぬれ」とは?

「ぬれ」もしくは「ぬれ性」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?これを認識することは、グルーの接着性を予測する上で大変重要なポイントとなります。

そもそもマツエクを装着するためには、グルーが被着体であるエクステや自まつげに「ぬれる(なじむ)」必要があります。またぬれ方と接触角(θシータ)の違いにより、接着の強さも異なります。

画像元:スリーボンドグループ 技術情報 接着の基礎について

グルーの接着性能を最大限に発揮できるのは、上記のイラストの一番右の状態。グルーがエクステや自まつげに完全に濡れた状態(接触角0°)が理想的です。そしてこの理想的な状態を「ぬれ」がよいと表現します。そして接触角が大きくなるにつれ、「ぬれ」は悪くなっていきます。
では理解を深めるために、エクステと自まつげの接着面を拡大した以下の画像を見てみましょう。

画像元:松風 接着の基礎「ぬれ」と「はじく」ver1.0.3

左の画像は、グルーが全体的になじみ理想的に接着されている理想的な状態、つまり「ぬれ」がよい状態。そして右の画像は、グルーがデコボコとしておりキレイになじんでいない状態、「ぬれ」が良好ではない状態といえます。

常に理想的な「ぬれ」の状態を作れるとよいのですが、そう簡単なことではありません。
そもそも、PBT(ポリブチレンテレフタレート)を原料とするエクステは、「ぬれ」が悪く、はじきやすいという特徴を持っています。その理由は、製品劣化防止・加工後のカールをキープするため、エクステの水分率が極端に低いから。
対して、自まつげはエクステに比べると水分率が高く「ぬれ」は良好です。しかし、皮脂やオフしきれなかったメイクなどの汚れが自まつげの表面に蓄積されると「ぬれ」が悪くなり、接着力の低下につながることもあります。

ポイント
被着体(エクステや自まつげ)の「ぬれ」が悪いとマツエクは取れやすくなる!


▼グルーについてまとめた以下の過去記事もぜひ参考にしてください。

お伝えしたいポイントとは?

マツエクが簡単に取れてしまう原因として、大きく2つの原因が考えられます。

エクステが剥がれやすいタイプの力を加えている
自まつげの「ぬれ性」が悪い

これら2つの原因を解消するために、お客様に心掛けていただきたいポイントをご紹介します。

グルーが剥がれやすいタイプの力を加えないために

エクステが「剥離」で取れる場合、エクステの根元部分が起点となることがほとんどです。そのためお客様には、マツエクの施術後の取り扱いの注意点や基本的なケア方法と併せて、エクステの根元の脆弱性についてお伝えするのがおすすめです!

例えば…
エクステの根元から、外側にまくれ上がる力(剥離)が加わると簡単に取れてしまうので、特にエクステの根元を刺激する行為は控えてくださいね!


▼こちらの過去記事でもホームケアについてご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

自まつげの「ぬれ性」を改善するために

自まつげは「ぬれ性」のよい被着体です。ただし自まつげは、クリーンな状態であることが大前提!
そのためお客様の自まつげを「ぬれ性」のよい状態にするためには、自まつげの水分率アップとクリーンナップが大切です。つまり日々のホームケアに、水分量アップのための美容液やクリーンナップのためのアイシャンプーなどを取り入れるのがおすすめ!
グルーの「ぬれ」の話は多少専門性が高いため、「元気でキレイなまつげなら、グルーの接着力がアップしてモチがよくなりますよ!」など、お客様にもわかりやすいな表現でお伝えしましょう。

まとめ

マツエクのモチが悪かったり、簡単に取れてしまうという状況が続く場合、マツエクが苦手とする刺激を頻繁に与えていたり、自まつげの「ぬれ」が悪い状態にあるのかもしれません。お客様に「触りグセ」はないか?どんな触り方をしているか?をヒアリングしてみてください。またエクステを装着する際に、“はじく”または“すべる”ような感覚で、スムーズに装着できない場合は、自まつげの「ぬれ性」が悪い証拠。適切なホームケアをおすすめしましょう。190614Euk

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