「自宅サロン」は長期的に続けられる?損益の構造とは

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アイリストが独立を考えたときの選択肢の1つ、自宅サロン。開業資金が少なく気軽に始められるイメージがあるかもしれません。しかし、うまく軌道に乗せられるかどうかは別問題。長期的に続けていくことができるのか、利益を確保することができるのかなど、不安に感じる部分もあるはずです。自宅サロンのメリット、デメリットや損益例、かかる税金についてなど、自宅サロンについて詳しく考察してみましょう。

自宅サロンって長く続けられるの?メリットとデメリットとは?

アイリストの独立方法の1つ、自宅サロン。メリットとデメリットについて考えてみましょう。

自宅サロンのメリットとデメリットは?

自宅サロンを開業する上でのメリットとデメリットはそれぞれどんなところにあるのでしょう。

自宅サロン開業のメリット

テナント料がかからない

開業資金などの経費をあまりかけずに営業できる

アットホームな雰囲気で営業できる

通勤の必要がなく、時間に余裕をもった生活ができる

自分のペースで営業できるため子育てや介護との両立がしやすい

自宅サロンのメリットとして大きいのは、自分の作りたいサロンコンセプトに沿って営業できることなのではないでしょうか。雇われている場合、経営者の考えるコンセプトに沿うのが原則です。自分の理想と違うこともあるでしょう。そういったしがらみなどがなく自分のお店を1から作ることができるのは、大きなやりがいにもなるはずです。自分の生活スタイルに合わせられるのもメリットの1つ。女性は結婚・出産、介護など、家族の状況に応じて生活スタイルを変えざるを得ないこともあるでしょう。お勤めは難しくても、自分のサロンなら予約時間を調整するなどして時間をうまくコントロールすることも可能です。

自宅サロン開業のデメリット

集客がしにくい

看板を出しにくいことがある

個人情報がもれてしまう可能性がある

プライベートとの切り分けが難しくなる

防犯対策が必要になる

リフォームが必要な場合、テナントを借りるよりも費用がかかることもある

自宅サロンのデメリットが大きいのは集客の難しさではないでしょうか。集客の方法としては、ホットペッパービューティーなどの情報媒体に広告を載せる、アプリなどの集客ツールを利用する、SNSやブログ・ホームページ作成、ポスティング、お客様の紹介などがあります。アイリストとしてサロンに勤務している場合、会社が集客を担ってくれていたはず。これを自分1人で行うのは大変です。広告を載せるのが効果的ではありますが、広告費は意外と大きいことも悩みの種になるかもしれません。

また、自宅サロンならではのデメリットとして、生活スペースと施術スペースのすみわけの難しさもあるのではないでしょうか。トイレや廊下など、家族のスペースをお客様にも提供する必要があるかもしれません。どこを見られても恥ずかしくないようにと細部に気を使う必要もあり、プライベートとの切り分けが難しくなることも考えられます。

マンションの場合看板が出しづらいため、住宅街だと行き方がわかりにくいこともあるでしょう。自宅の場所によっては、最寄り駅が遠い、マツエクサロンのニーズが少ないといったデメリットがあることもあるかもしれません。

長く続けられるかどうか

①立地や集客

自宅サロンを長く続けられるかどうかは、技術や接客に問題がない場合、一番差がつくのは立地だといえます。子育て世代が多く子ども連れでも気軽に足を運べる自宅サロンへのニーズがある、最寄り駅が近い、駐車場があるなどの利点があれば集客につながるかもしれません。自宅周辺の情報を確認しておく必要があるでしょう。

また、集客できるかどうかも重要です。どんなにいい立地であってもお客様が来店されないことには始まりません。まずは広告やSNSなどでサロンがあることを発信し、認知してもらう努力が必要です。ある程度集客が見込める地域で効果的にサロンを広めることができてはじめて長く続けることができる可能性がでてくるのではないでしょうか。

②ライフステージと家族の理解 

 

どのライフステージに自宅サロンをスタートさせるかという点も長く続けられるかどうかに影響を及ぼします。女性の生涯には妊娠出産といったライフステージの変化が起こり得るもの。すでに子育てを終えたアイリストなら大きな変化はないかもしれませんが、若いアイリストの場合、これから結婚・出産というライフステージの変化を迎えることもあるでしょう。そんなときに必要になるのが家族の理解です。

サロンを行う自宅=家族との生活の場であるケースが多いのではないでしょうか。自宅サロンをするということは、1部屋分生活スペースがなくなるということです。夫婦2人の時や子どもが小さいうちはいいかもしれませんが、家族が増え子どもが成長してくると手狭に感じられるかもしれません。また、子育てをしつつ自宅サロンをする場合、施術中の子どもの保育をどうするかという問題もあるでしょう。施術中に子どもが別室で過ごしている場合、どうしても物音が気になることもあるかもしれません。

保育園に入園する必要があっても、サロン勤務の場合に比較しても保育の必要性について立証しづらく、難航するケースも多いでしょう。

自宅でサロンをするということは、あらゆる場面で家族の理解や協力が必要となるのではないでしょうか。自宅サロンではライフステージの変化に対応し続けることが難しく、仕方なく辞めざるを得なかったり、サロン勤務に戻ったりというケースもあるようです。

見出し2:「自宅サロン」の損益例

自宅サロンの損益について、例を挙げて確認しておきましょう。保健所のチェックにより、美容所としての営業が認められたものとします。そのため、不動産の敷金礼金、家賃などは家庭の収支とし、考慮しないこととしましょう。アイリストは1人だけのサロンで、別途人は雇わず自分だけで営業します。

開業する前にかかる費用

開業にかかる費用についてみていきましょう。

内装費:およそ70万円
施術に必要な道具:およそ120万円
広告費:およそ10万円

内装費の内訳

器具洗い場のリフォーム40万円

プライベート空間との仕切り10万円

施術室のインテリアなど:20万円

揃えておくべき備品・道具の内訳

ラッシュ

マツエク施術用ベッド

ツイザー

グルー

プライマー

照明

道具を置くデスクと施術の際に座るスツール

消毒用品

タオル


値段はどれもピンからキリまで幅広いものですが、100万円前後で用意できるでしょう。

広告費の内訳

ホットペッパービューティーなどの広告費:地域にもよるが1カ月最低5万円〜50万程度

地域媒体の広告費:地域や媒体にもよるが1カ月3万円程度

チラシ:自分で作成し印刷代2万円程度


以上が開業にかかる費用です。節約できる部分は施術スペースの内装ですが、雰囲気補正として重要な部分でもあります。あまり簡素だとやる気を感じられませんし、サロンの雰囲気の良し悪しにも関わってくる部分です。メイク直し用のスペースを設けるなら、鏡や机も必要になるかもしれません。綿棒やティッシュなどの消耗品も必要です。カルテや電卓、時計なども用意しておく必要があるでしょう。

意外とかかるのが広告費です。 スタート時の顧客の数にもよりますが、最低でも初めの1年はホットペッパービューティーや地域媒体の広告を出す必要があります。軌道に乗ってきたらSNSやブログなどの無料広告に切り替えるというサロンもありますが、サロン運営には「自然失客」もつきもの。通ってくれているお客様も妊娠や出産、転居などにより通い続けることができなくなることはあります。近隣に同様のサロンがあればリピートさせ続けることにもコストは掛かります。新規集客に対する対策は常に取り続ける必要があるといえるでしょう。

自宅サロンの損益例を見てみよう

上記の内容で実際にサロンをスタートさせたとします。

開業資金:200万円

マツエク施術の単価:1人5,000円

マツエク施術の利益率:50%

週休2日で1日の施術数2人


とすると、週に10人のお客様を施術することになります。月の収入は単純に考えて20万円。利益で言うと10万円が利益です。広告費や消耗品の費用は随時必要になります。このペースで営業できたと仮定し、初期投資の200万円を回収するためには、変動や広告費や消耗品などの出費も考慮するとおよそ3年程度かかることになるでしょう。毎月来店してくれる常連のお客様は20~30人は必要で、さらに15~20人程度新規のお客様を広告や紹介などを介して呼び込む必要があります。

あくまでもこれは一定のペースで営業できた場合です。自身の病気や家庭の事情などで営業できない場合や、うまく集客ができずお客様が集まらない場合、収入の保証はないということも覚えておきましょう。

「自宅サロン」の税金あれこれ

自宅サロンを開業することでかかる税金について確認しておきましょう。

個人事業主にかかる税金は?

自宅サロンを開業するということは、個人事業主になるということです。個人事業主にかかる税金は以下の4つ。

所得税(確定申告によって決定)

住民税(所得金額の10%)

事業税(所得金額が290万を超える部分にたいして税率5%が課税)

消費税(基準期間に課税売上高が1000万円を超えた事業者が対象)


売上がどのくらいあるのかによって必要な税金は変動します。

自宅サロン経営の確定申告について

個人事業主の所得税を確定するために必要なのが確定申告です。しかし、自宅サロン経営者全員が確定申告しなければならないかというとそうではありません。確定申告が必要になるのは以下の場合です。

本業として自宅サロンを始めた場合:所得金額が38万円を超えた場合

副業として自宅サロンを始めた場合:所得金額が20万円を超えた場合

所得金額とは収入から必要経費を引いた金額のこと。100万円の売り上げがあった場合、ラッシュやグルーといった必要経費を引いたものが所得金額となります。該当の期間は1月1日から12月31日までの売り上げ。上記の場合に当てはまる場合、翌年の2月16日から3月15日までの期間に税務署へ申告しなければなりません。また、自宅サロンの場合、確定申告書Bという書式になることも覚えておくとよいでしょう。

また、確定申告する際に必要な売上項目と経費として計上できる項目についても把握しておきましょう。

確定申告する際に必要な売上項目

施術金額

サロンで販売したもの

キャンセル料

経費として計上できる項目

宣伝広告費

ラッシュやグルーなどの購入費

サロンで使用する消耗品


自宅サロンの場合、利用面積などによっては家賃や光熱費の一部を経費として計上できる場合もあるので確認しておくとよいでしょう。きちんと記録しておき、確定申告の際に困ることがないようにしておいてください。

まとめ

自宅サロンを長く続けていくために重要な課題は集客にあります。広告や宣伝には思ったよりも費用や手間、人脈などが必要になるもの。自宅サロンの場合、集客などの経営に関わるあらゆることをすべて自分1人で行う必要があります。やりがいを感じる部分であると同時に、大変さの面で会社に雇われていたときとの差を感じる部分かもしれません。息の長い営業を行うために避けては通れない命題になるのではないでしょうか。集客方法や損益についてもしっかりと考慮し、自宅サロン開業へのステップを踏むかどうかは慎重に考えるようにしましょう。181114Ess

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